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癒されたいとか。
癒したいとか。
僕はその気持ちがわからない。
確かに僕はどこかが壊れ、膿んでいるとは思うけれど。
それがどこか判らないから。
どこを癒せばいいのか判らないし、他人のどこに癒しが必要なのか解らない。
望むなら好きなだけ言葉にしてやる。
望むなら好きなだけ示してやる。
だが。
それと同等のものを求められると言うことを覚えておけ。
何の見返りもなく与えられるものなんて俺は信じない。
信じられない。
それを不幸だと同情したければすればいいけれど。
少なくとも俺自身はそれを不幸だと感じない程度には幸せに生きている。
一人の歌姫。
諸侯を筆頭に王子からも婚礼を申しこまれていた噂をされる、絶世の美女と謳われた彼女。
嫁いだのはとある国の城主。
それはそれは美しい姿だったという。
目の前に詰まれた大金に目が眩んだとか。
思い上がっているだとか。
自国の王子を袖にされた国民からの口さがない噂は絶えない。
彼女の祖国が。
その城主の軍によって包囲されていた事実を知るものは。
今も少ない。
「私のことを好いてはいないのだろう?」
「ええ」
跪く。
頭を垂れる。
心を伴う必要なんてないその行為に、目の前の男は満足そうに顔を歪める。
「何故ここに来る?」
「貴方は私が欲しいのでしょう?」
笑う。哂う。
自分の価値なんて興味はないが。
この男に私は極上の餌。
「国も民も…要らぬと申すのか」
「要りません。ただ…血は見たくありません」
「心得た」
信念なんてものじゃないけれど。
ただ、従うのは自分の心に。
その結果。
見知らぬ人間になんと囁かれようと構わない。
貴方のためなら―――裏切りの汚名も喜んで被ろう。
それが私の忠義。
「君ならどちらを取る?」
問いかけたのは君主。
答えるのは臣下。
「どちらも取りません」
問いかけたのは貴方。
答えたのは私。
「君ならどうする?」
「私は私に従うだけです」
助けたいのは貴方。
裏切るのは私。
体が生き残ることより。
精神が貫かれることより。
貴方が助かることが。
自分に悔いのない判断をしてくださることが。
貴方が民に愛され続けることが。
私の望みですから。