■ 泪

不意に泣きたくなった。
哀しくもないし、淋しくもないのに。
ただ漫然と、哭きたくなった。

■ 思い出す絶対的風景

土の匂い。草の匂いが強くなり、混ざる雨の匂い。
ごうごうと鳴る川にばちばちと葉が弾く音。


がうがうと配水管を流れ、ごぽごぽとコンクリートの穴へと消えていく水の塊。
金属やガラスを叩く雨音は微妙な音階を、車のタイヤは豪快な飛沫をあげていく。


重ならない。
重なる。

故郷の思い出。

■ 箱庭かたり

依存して。
依存されて。

共に幸せならばいいじゃないか。
成り立たなくなって関係が破局しても。
少なくともその間の幸福な記憶は遺される。

誰も信じない君こそを僕は哀れむよ。

■ 美醜

一緒に居たら自分の汚さが際立つと言った彼女の方が、私なんかよりも余程心根の美しい人だった。

■ できることひとつ

「聞く」以外のことを望まないで。

「助言」なんて所詮あなたの心根ひとつで無駄になることをするほどの優しさはない。
「判断」して「責任」を取るのは私の役割じゃない。

だからこそ「聴く」ことは厭わないし、以外はしたくない。