06 | 2025/07 | 08 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | ||
6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 |
13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 |
20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 | 26 |
27 | 28 | 29 | 30 | 31 |
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
「私のことを好いてはいないのだろう?」
「ええ」
跪く。
頭を垂れる。
心を伴う必要なんてないその行為に、目の前の男は満足そうに顔を歪める。
「何故ここに来る?」
「貴方は私が欲しいのでしょう?」
笑う。哂う。
自分の価値なんて興味はないが。
この男に私は極上の餌。
「国も民も…要らぬと申すのか」
「要りません。ただ…血は見たくありません」
「心得た」
信念なんてものじゃないけれど。
ただ、従うのは自分の心に。
その結果。
見知らぬ人間になんと囁かれようと構わない。
貴方のためなら―――裏切りの汚名も喜んで被ろう。
それが私の忠義。
「君ならどちらを取る?」
問いかけたのは君主。
答えるのは臣下。
「どちらも取りません」
問いかけたのは貴方。
答えたのは私。
「君ならどうする?」
「私は私に従うだけです」
助けたいのは貴方。
裏切るのは私。
体が生き残ることより。
精神が貫かれることより。
貴方が助かることが。
自分に悔いのない判断をしてくださることが。
貴方が民に愛され続けることが。
私の望みですから。
私にはあります。
譲れない願い。
たとえ守るべき貴方からであっても。
その瞳を絶望に曇らしてでも。
貴方を守るためならば。
貴方を裏切ることも厭いません。
この願いを叶えるためになら―――矛盾していると罵られても構いません。
守るべきものを。
全てを引き換えにしてもいいと思えるほどのものを。
貴方は持っていますか?
うっそうと、だが静かに降り続く雨の中。
世界は美しいと、笑った彼女は。
今。
一筋の煙となって空へと消えていきました。
彼女はもうここにはいない。
それでも。
この世界は美しい。
きっと君はそう笑うのだろうと思うと。
ほんの少し、笑みがこぼれた。