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自己満足詩系blogです。 一日一題更新予定。 早々挫折で気まぐれ更新。 途中から写真兼用に。
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夜。

それが唯一ふたりの時間。

 

早朝から働く自身と。

夜から働く彼女の。

出勤が、帰宅が交わる時間。

 

いつからだったか始まったその奇妙な関係。

仕事が終わる俺を彼女が待ち。

仕事が始まる彼女を俺が送っていく。

 

決して太陽の下では会わない二人。

月の監視付きでしか会えない二人。

 

そんな関係はもう要らない。

 

「提案があるんだけど」

「なに?」

「この関係を壊したいんだ」

 

彼女の足が止まる。

 

「どういう風に?」

「望むように」

「誰が?」

「僕らが」

 

この先に続くのは半分以上賭けの言葉。

 

「同じ気持ちだと思うんだけど…どうかな?」

彼女の表情は変わらないように見える。

ただぽかりと浮かぶ月だけが、妙に煌々と見えて無性に苛々して目を閉じた。

 

半月はもう見えない―――見たくない。

 

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変わっていく貴方。

移ろっていく景色。

過ぎていく時間。

変わらない私たち。

 

決して。

積極的に変わりたくないと望んだわけではなかったけれど。

変わりたいと望んだわけでもない私。

 

毎晩のように姿をゆっくりと変えていく月をぼんやりと眺めながら思う。

 

私も穏やかに少しずつ。

ふたりで共に移ろって生きたい。

 

手を伸ばす。

触れたくて仕方ない。

 

触れそうになる。

けれど触れられない。

触れさせてもらえない。

 

月光の元。

 

今日も私は変わらぬ距離を動かしたくて。

動かせなくて。

 

それでも手を伸ばしてしまう私はバカなのでしょうか。

 

「月の光…雨みたいに降ってこないかな?きっと綺麗だと思うんだけど」

 

腕を伸ばす。

両手を広げ、空を見上げる。

 

何かに心の大部分を占められている時の君の癖。

君の口癖。

 

「どう思う?」

 

見上げられた視線が少しだけ地上に近い位置に動く。

映るのは俺の顔。

 

答えなんて本当は求めていないくせに。

本当は一人で居たいと、俺なんかの心配なんていらないと言いたいくせに。

 

無言で内に逃げていた彼女。

けれど俺が視線を向けてしまったから。

俺の存在を自分自身に思い出させるように質問をするずるい彼女。

だから嫌いになれない。

 

「優しい光が降る世界なら…私も優しくなれるような気がするんだけどな」

 

月光の降る世界。

 

月光の降る夜が日常的に存在するなら。

きっと何の思いも抱かないだろう。

あることに慣れたものに人は一々感動しない。

時にしかないものなら、単純にその幸運に出会えたことを喜び、時折思い出し幸せな気持ちにでも浸ればいい。

 

正直、そんなものに何の興味もないし、別にあったからと言って、どうにもならないだろうと思うけれど。

 

「―――雨だれのような月光」

「ん?」

「―――今なら見たいかもしれない」

 

ようやく。

驚いたように。

帰ってきた。

 

じっと俺を見つめる彼女。

夜空から手の中へ取り戻せたことに安堵のため息をつく。

時折、隣から彼女を攫っていく月夜には嫉妬のような自己嫌悪な感情しか感じないけれど。

 

「今だけ?」

「今、だけ」

 

君といるこんな夜になら、月光が降れば綺麗だと思うくらいの感情は湧くかもしれない。

 

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